Live at The Louvre
2000年、鮮烈なデビュー盤で話題をさらった庄司紗矢香の第2弾は、パリでのリサイタルのライヴ盤である。1曲目のドヴォルザークは、めざましいテクニックをもった若手が取り上げた場合に、ともすれレーシング・カーが田舎のあぜ道を行くかのような様相を呈してしまう曲でもあるのだが、当盤ではのびやかに音楽が迸っているのが心地よい。シマノフスキが初期に書いた情熱が渦巻くヴァイオリンソナタや、明朗な表情を湛えたブラームスの第2ソナタでも、みずみずしい歌いまわしで確固たる存在感を示している。圧巻は、なんといってもラストに配されたラヴェルの「ツィガーヌ」だろう。重音のトリル奏法のキレといい、後半のフリスカ第1部の第2変奏で用いられる通常のピチカートおよび左手のピチカートの冴えといい、第2部に出現する切分音をもつハンガリー風のフレーズの処理といい、庄司が紡いでみせる音楽は実にスリリングで、しかもしなやかである。脱帽!